両親にはあまり病状を話さなかったが、紗智には何でも話した。こうしていな
いと僕はパンクしちゃう、紗智は良き理解者だった。
「大丈夫?」
「もう慣れたよ、はは。何か欲しいものある?」
「今日、いつも頼んでいる月刊の将棋の雑誌の発売日だから・・」
「了解、帰りに買ってくるね」
「帰り?どこか出かけるの?」
「今日、カウンセリングの日だから、お母さんと行ってくる」
「じゃあ、お母さん出かけたらお風呂入る」
「何日、入ってないの?」
「4日」
「そう、じゃあ、行ってくるね」
「うん」
部屋を出る、今回は短い方だな、紗智はあまりお風呂に入ろうとしない、平均
して10日程入らない。
「お母さん、紗智、今日風呂入るって。タオル置いといてあげて」
「分かったわ、いつもありがとうね」
「お父さんは?」
「もう、出かけたわ、私たちもそろそろ行かなくちゃ」
「うん、帰りに本屋寄ってくれる?買いたい本があるから」
「いいわよ」
もう梅雨は明けた、病院に入院していた間に梅雨を過ごしてしまった。入院し
ている間に体の病気はなんとか落ち着いた、でも心の病は悪化していく一方だ
った。藤田君と佐藤君と遊んでもらっている間はすごく楽しかった、でも、も
う会う勇気は湧かない。変わってしまった、そう思う。藤田君のお父さんに何
かあったら、すぐに知らせてくださいと仲良くなった看護士さんに頼んでおい
て、夜中「亡くなった」と聞いた時、しばらくどうしようかと悩んだ後、勇気
を出して病棟に向かったら、藤田君が外にいた。隣に座って話をポツリポツリ
と聞いた、次の日佐藤君が来て詳しい事情を話してくれた、佐藤君は言ってく
れた「瀬戸になら話しても大丈夫だろう、瀬戸には話しておきたい」って。
外に出ると、もうすぐ夏だと実感できた、かなり熱い。嫌いな季節じゃない。
そろそろ扇風機出さなきゃ。
車の中は日光の熱が溜まって蒸し暑かった。
「クーラー点けていい?体、大丈夫?」
お母さんが尋ねた。
「大丈夫だよ」
体のことをお母さん達は心配してくれた、でもそれ以上に,今は心のことを心
配している。
病院には通院しているが、今は隣の町の心療内科のクリニックに通ってカウン
セリングを受けている。お父さんとお母さんがカウンセリングを受けた方がい
いと主張したのだ。僕は正直受けたくなかった、今通っている病院だけでいっ
ぱいいっぱいだった。
「今日も母さん、同席しなくていいの?」
「うん、一人の方が、ごめんね。難しい年頃だからさ、はは」
「そうね、難しい年頃よね」
違う、そんな理由だからじゃないのだ、本当は苦しみを聞いて欲しくないのだ
。でもそんなこと口が裂けても言いたくない。

診察室に名前を呼ばれて入る。
「失礼します」
僕は先生にお辞儀をした。
「こんにちは」
先生が返事をする、先生は若い女性だ。若いので経験はまだ浅いだろうが、評
判は良いようだ、その評判を聞きつけてお父さんたちはこのクリニックを選ん
だ。
僕も実際そんなに嫌いじゃない、でも話したからと言って、良くなるわけでは
なかった。
「どうですか、前の診察から一週間経ちましたが・・」
「良くないです・・」
僕は自分の症状を並べた。
「そうですか、発作の出る間隔は?」
「・・だんだん短くなっています」
「発作が出た時の対処法は?」
「頓服の薬を飲んでいますが、あまり効きません」
「今、一番不安なことは」
「体調と学業・・」
「学校には行きたいですか?」
「・・はい、でも・・今の状態では通いたくないです・・学校で発作が起きた
時の自分を見せたくないです」
「そうですね、今はまだ休養が必要ですね・・御家族の方とは?」
「私の病気をよく理解してくれていますし、大切に思っていてくれています」
そうとても大切にしてくれている。
「そうですか・・・」
話は30分程続いた。
部屋を出るとお母さんが待合室で待っていた。待合室は病院とは違い、気持ち
が落ち着くように壁は薄い黄色の布を思わせる壁紙、観葉植物がいくつか、緩
やかで音の小さいBGM。病院とは大違いだ。
病院では毎回、注射をしていた、注射は日常茶飯事だったが小さなころ泣かな
いのを褒められたので嫌いではなかった。
「終わったよ」
「うん、どうだった」
「よかったよ」
僕は嘘をついた。
「そう」
お母さんは嬉しそうな顔をした・・・ごめんなさい、お母さん。
 
 帰りに寄った本屋は平日の午前ということもあって人は少なかった。
「母さん、料理の本のところにいるから」
「うん」
あった、あった。
 僕は将棋の雑誌を手にする。
 あと参考書買おうかな、勉強遅れているし。
分かりやすそうな物理の参考書を手に取った。
 物理苦手だからなー、授業受けていないからやばいし、こっちの本の方が分
 かりやすそうだな・・
僕は参考書を選び終えレジに向かった、財布からお金を出した瞬間、それが起
こった。
・・発作だ・・
思考がめちゃくちゃになる。なんとか、清算を終え、母のところに向かおうと
した。
・く、目も・・真っ直ぐ見えない・・ヤバい・どうしよう
心の中はパニックになった。
もう歩くこともできなくなった。
「裕太!」
お母さんが来てくれた。
「・・ごめん・・発作が、あと目も・・」
僕はベンチに座らされ、なんとか薬を飲む、あまり効かないことも分かってい
るのだが、藁にもすがる思いだった。
「大丈夫?少しここで休む?」
僕は首を横に振った。
「できたら家に帰りたい」
「分かった、車まで行ける?」
「ごめん、連れて行って、目がちゃんと見えないから」
僕はお母さんに手を引かれなんとか車に乗り、家へと向かった。お母さんはも
う気が気じゃない様子だった。
「大丈夫?」
 「・・そんなに・・・スピード出さなくていいから・・ゆっくりでいいよ・
 ・・ごめん・・」
「うん」
くそ、思考が、全然働かない。
恐怖で心の中は埋め尽くされていった。
もう何も考えられない、怖い、頭が、めちゃくちゃだ。目もまっすぐ見られな
い・・・
目がまっすぐ見えないことは心の病の発作を増大させた。
車は車庫には入れすに、家の前に横付けされた。
「着いたわよ」
「・・車、入れなくていいの?」
「大丈夫よ、そんなの後でいいから」
「うん」
僕は手を引かれ家の中に入っていった。
居間のソファーに座る。
「どうしたらいい?」
「少し休む・・ごめんね・・」
「謝らなくていいのよ」
「あ・・本・・車の中に置いてきた・・」
僕はそんなどうでもいいことを気になって言った。
「すぐに、持ってくるから」
お母さんは取りに行き本の袋を持って戻ってくる。
「ちゃんと・買えたかな・・・僕・」
「待って、中は・・」
お母さんは袋の中身を出した。
「えっと、勉強の・・物理の本と、もう一冊は・・」
母は何故か固まった。
「?・・将棋の雑誌あった?」
「これって・・」
「紗智に頼まれたの・・お母さん?」
お母さんは静かに二階に上っていった。
「お母さん?」
急に怒声が聞こえた。
「紗智!」
何?
「あなた、裕太に、将棋の本買ってくるように頼んだでしょ!」
お母さん・・
「紗智!裕太、病気で大変なことになったのよ、本ぐらい自分で買いに行きな
さい」
やめて・・お母さん・そんなのじゃないから・・・紗智のせいじゃないから
僕は声を出したくても何もしゃべることができなかった。
「ドアをあけなさい!紗智!」
紗智は沈黙を守っているようだった。
「・・違う」
僕はなんとか声に出したが、それはお母さんには届かなかった。僕の思考はど
んどんめちゃくちゃになっていく。
お母さんはもう何も言わず数分後降りてきた。
「違う・・お母さん・違うよ・・紗智を怒らないで・・・お願い・・・・紗智
のせいじゃないから・ごめん、お母さん、ごめん」
「・・」
泣いているの?お願い、泣かないで。
目がちゃんと見られなかったので、お母さんの顔を見ることができなかった。
「ごめん」
思考が狂っていく中、僕はごめんを繰り返した。
睡眠薬を飲み、僕は一人になりたくないからと、居間のソファーに横になった
、それから数時間思考は正常に戻らず苦しかったが、なんとか眠りに就くこと
ができた。
夕方、目を覚ました時には発作はもう治まっていた。
「お母さん?」
呼ぶと、お母さんは台所から顔を出した。
「もう大丈夫だから、ありがとう」
「そう、良かった」
「仕事行かなくてよかったの?」
「・・辞めた。さっき電話して辞めたわ」
「そんな、ぼくのせい?」
「・・・」
「今から、電話して取り消して」
「裕太のせいじゃないわ、母さん、少し、休みたかったから」
「・・・」
「夕ごはん、何食べたい?」
「いらない。ごめん、食欲無い」
本当に食欲はなかった。
「そう」

僕は紗智の部屋の前に立った、ドアをノックする。
「紗智、夕食だよ」
「・・・」
「昼ごはん無かったから、お腹空いただろ」
「・・・」
紗智が僕の言葉に返事をしないなんて初めてだった。
「・・紗智、昼間はごめん、僕のせいでお母さんが怒っちゃって」
「・・・・」
「ごめんね」
「・・・」
「食事、ドアの前に置いていくから、食べて。あと将棋の雑誌も置いてくから
」
僕は食事をドアの前に置いてその場を後にした。紗智はとても繊細だから無理
強いをしてはいけない。食事は食べられずにそのまま次の日の朝まで置いてあ
った。
それから3日間紗智は朝食しか食べなかった。もちろん僕に会ってくれなかっ
た。2日目の夜、お母さんがドアの前で謝ったが返事はなかった。
四日目の夜、僕はドアの前に座り、少し話をした。
「僕さ、昔から、病気のことで紗智に迷惑かけてばっかりだったよな。お母さ
んとお父さんは僕にばっかり目を向けて紗智のことおろそかにしていたよね、
ごめんね」
そうだ・・
僕は部屋に行き紙とペンを持って戻ってきた。そしてあることを書き、そっと
紗智のドアの下に押し込んだ。
「紗智、これ」
僕は5分程待ったが何も紗智は言わなかったので、去った。

次の日も紗智は何も言わなかった。
そしてその次の日、朝食を持って紗智の部屋のドアの前に来ると、一枚の紙が
落ちていた、紙にはこう書かれていた。
8四歩
ドアをノックしたが返事はない。
僕は紙の裏に自分の次の手を書いてドアの下に押し込んだ。
「食事、ドアの前に置いておくから」
その日から紗智は、ドアを開けてくれなかったが、毎食食べてくれ、食事を持
っていくたびに、次の手が書いてある紙がドアの前に置いてあった。僕は毎回
、自分の手を書いてドアの下に押し込んだ。
10日目の夜、夕食を持っていくと、何も書かれていない紙が置いてあった。
裏返すとこう書いてあった。
ごめんなさい
僕はノックをしたが、紗智は声を返してくれなかった。紙に「紗智は悪くない
」と書いてドアの下に押し込み、数分待つとドアが開いた。
紗智は何も言わず下を向いていた、部屋の真ん中には将棋盤がおいてあった、
今までの手の通り駒が進めてあった。
「投了かい?」
僕は尋ねた。紗智は首を横に振ってこう言った。
「まだ続ける」
「分かった」
僕は部屋の中に入って将棋盤の前に座り、紗智の手を待った。紗智も将棋盤の
前に座り次の手を指した。僕は持ってきたカレーライスを渡す。僕が次の手を
指すと、紗智はカレーライスを食べながら次の手を指した。
その夜遅くまで僕らは将棋を指した。結局僕が詰まれ、投了した。そしてやっ
と紗智は笑顔を見せてくれた。

僕の発作は3日に一回の割合で起きるようになった。非常に辛い。
外出も病院とカウンセリング以外はあまりしなくなった。
何度か電話で近藤先生と話をした。そして結局学校は休学することになった。
一学期が終わろうとするある日、ある人が会いに来た。

その日は朝から暑かった、蝉の鳴き声で目が覚めた。朝日はもう上っていた。
今日は四時間か、久しぶりに少しは眠れたな。神社の方から蝉の音がするのだ
ろうけど、四方から囲まれているかのように蝉の鳴き声は聞こえた。
もうすっかり夏だな。
夏は嫌いじゃない、でもこう家の中に閉じこもっていちゃ蒸し焼きになる。
コンコン
ノックされる。
「はい」
 僕は慌てて左腕を布団で隠す。
「起きたか?」
お父さんだ。
「うん、昨日遅かったね」
「お前にプレゼントがあるから、あとでおいで」
 プレゼント?
僕はリストバンドを左腕に付けて降りて行った、左腕のことを知った時お父さ
んたちは責めなかった、でも悲しそうな顔をした。ごめん。
朝食のテーブルの上に紙袋が置いてある。お母さんが嬉しそうな顔をしている
。僕はあまり物を欲しがらなかった、ただ欲しいと言ったことがあるのはパソ
コンぐらいだ、もちろんそれは紗智のためのものだった。だから何かをもらっ
てもそれほど実はうれしいとは思わないのだが・・
「そら。開けて見ろ」
「うん」
携帯電話だ。
「高校卒業してからでいいのに」
「外出した時にいつでも連絡がとれるようにした方がいいだろ、発作がでた時
のためにも。」
「うん」
確かに・・そうだけど。
「それに・・」
「それに?」
「お友達ともメールしたいでしょ」
お母さんが言った。
みんな仲良くしてくれたけど、結局最後に突き放したのは僕の方だから。佐藤
君と藤田君は入院中も仲良くしてくれたけど、逃げ出したのは僕だから、変わ
ったのはみんなじゃなくて、僕なのだから。今更・・・
「ありがとう」
僕は笑顔でお礼を言った。
「よし、朝ごはん食べよう」
お父さんは満足そうに言った。

「お兄ちゃん、携帯もらったの?」
紗智は朝食を食べながら言った。
「うん」
「なんか嬉しくなそうだね」
「正直、欲しいとは思っていなかった。紗智は欲しいのか?」
「私はパソコンあるから」
「そっか」
 「お兄ちゃんはリアルで友達いるから活用すればいいのに、この前話してい
 た、えっと、佐藤君と藤田君だっけ、その人たちは?」
 「もう会っていないよ、誰とも連絡とっていないし。それに佐藤君と藤田君
 は携帯持っていないよ」
 「ふーん、でも発作の時は?」
「外出中は心配だけど・・・」
「だけど?」
家にいる時に発作が起きても誰かに助けを求めることはもうしないだろう。自
分が苦しむことは嫌だけど、誰かが悲しむのはもう嫌だ・・
「まあ、猫に小判だな」
「お兄ちゃん、長考しすぎだよ」
「ああ」
僕は二人の間にある将棋の駒を進める、紗智はどんどん強くなっている、もう
今じゃ全然敵わない。最近では飛車角落ちでやってもらっている。紗智の集中
力はすごいと思う。寝るとき時以外は、食べる時もほとんど将棋を指している
。
「髪だいぶ伸びたな」
「うう〜」
「暑くないか?」
「う?なんて?」
 ほとんど聞こえてないみたいだ。
 「髪。切ってやろうか?」
 「紙?」
 「髪の毛だよ」
 「ああ、うん、明日ね」
 紗智はまた盤上に視線を戻す。紗智の髪の毛は引きこもりになってからは僕
 が切っていた、フケだらけだ。
 学校のみんなどうしてるかな。
 そんなことを考えているとピンポーンとインターフォンが鳴った。
 10秒ぐらいしてからもう一度鳴る。
 そうだ、お母さん、買い物だ。
 「ちょっと見てくる」
 「う、う〜」
聞こえてないな。

ドアを開けるとそこには懐かしい姿が・・吉本先生だ。
「こんにちは、瀬戸君」
「どうも」
お辞儀をする。病院以来だ、どうして来たのだろう?もしかして、今頃になっ
てあのことを・・
「お母さん、いる?」
お母さんに会いに来たのか。
「いえ、今、買い物です」
「そう、少し、お話いいかしら」
・・・
「はい」
僕は居間に通した、先生は薄手の長袖の白い服を着ている、靴を脱ぐ姿にドキ
ッとする。
緊張してきた。
相手は先生だぞ、先生だぞ。
何故か蝉の鳴き声が小さくなって、自分の心臓の鼓動が大きくなってきたよう
だ。
暑い。
「ク、クーラー点けますね」
「別に暑くないけど、瀬戸君、少し顔赤いけど大丈夫?」
「大丈夫です・・今日はどうしていらっしゃったのですか?」
まさか、あのことじゃ・・
あ、いけない、視線が胸の方いった、気付かれたかも。
「なにか飲みますか?」
僕は視線を逸らしながら言った。
「ジュース買って来たのよ、お菓子も」
「用意いいですね」
「はい、これ、ノートのコピー、お見舞いよ」
「ノート?」
「先生も教える時にはノート作るのよ、そのコピー、数学だけだけどね」
「あ、ありがとうございます・・・・すみません」
「謝らなくていいわよ、ありがとうだけでいいのよ」
「はい」
ノートは白黒コピーの上に赤ペンで重要とかかれ、青のボールペンで解説が書
かれていた。
「あのね、このことなんだけど・・」
そう言って、一枚の白い封筒を取り出す。
やっぱり、このことか・・
「・・・すみません、迷惑でしたよね・・あの、無かったことにしてください
」
逃げ出したい、こんなの嫌だ。
「そうじゃないの」
「?」
「返事遅くなってごめんね、いいわよ、付き合いましょう」
「え、でも」
「もちろん、学校には内緒でね」
「は、はい」
こんなこと、こんなこと起こらないと思っていた。
「あの、ありがとうございます」
僕はお辞儀をした。この瞬間、僕の世界は一変した。吉本先生が僕の彼女にな
ってくれるなんて。
「ふふふ、こちらこそ。よろしくね」
「は、はい。あ、そうだ、えっと」
「どうしたの?」
「その、携帯持っていますか?」
「ええ」
「僕、今朝、親にもらったんです。発作の時とかのために、だから、その・・
」
頑張れ、僕!
「じゃあ、メアド交換しようか?」
「はい!」
「はは、実は私緊張していたのよ」
「先生が緊張?」
「うん、家の前ずっとうろうろしていたの、追い返されたらどうしようと思っ
てね」
「そんな・・」
とても緊張するようには見えない、だってもう大人に見える。
「今日持ったばかりじゃ操作分からないよね、携帯貸して」
「はい」
先生は自分のメアドを登録した。
「いつでも、メール送ってくれていいからね。学校どうする?近藤先生に聞い
たのだけど休学するの?」
「・・はい、今の体じゃ、とてもじゃないけど・・」
「ただいまー」
お母さんが帰ってきた。
「あれ、どなたか来ているの?」
お母さんは先生の靴を見て言った。
「お邪魔しています、副担任の吉本です」
先生がお母さんの方に行った。
「吉本清子」
携帯の画面を見つめて呟いた。僕の胸は高まっていた。先生はお母さんといく
つか話をして、帰った。

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