第五部 それぞれの道
僕は自分の実家に来ていた、もう敷居をまたぐことはないと思っていた、でも
、やはり報告はしたい。
居間に通される。まるで他人みたいな扱われ方だ。われたガラスは綺麗に直っ
ている。
「何しに来た?」
父さんが見下すような態度で僕に問うた。
「大学に合格しました、S大学の夜間部経済学部です」
「それで?」
「就職先も決まっています、今のアルバイト先の秘書にさせていただくことに
なりました」
「・・・」
「私はお父さんの誇りになれるような人物になれるよう邁進したいです、もう
縁は切られた身ですが、どうか見守ってください」
「・・・」
お父さんは何も言わずに奥に姿を消した。
僕は静かに家を出る、外には藤田と瀬戸が待っていた。
「終わったよ」
「どうだった?」
藤田が尋ねた。
「まあまあだ、そんなに簡単じゃないさ、次はお前だな」
「ああ」
藤田が答える。
俺は墓の前で手を合わせる。
「父さん、俺、大学に落ちちゃったよ、でも私立に行くつもりはない、もう一
年頑張ってみるよ。今度の受験は瀬戸と一緒だ、見守っていてくれ」
「・・・」
佐藤と瀬戸も後ろで手を合わせてくれている。
「よし、ありがとう、もう一つ寄りたいところあるのだけどいいか?」
「どこだ」
「大切な人のところさ、病院だよ」
「病院?」
俺達はある病室に来ていた。
「久しぶり、おばあちゃん」
「ああ、まこと君、ひさしぶりじゃねー、元気にしていたかね」
「うん、今日は友達も一緒だよ」
「そうかい、そうかい、こんにちは」
佐藤と瀬戸は頭を下げる。
「おばあちゃん、俺頭悪いから、大学落ちちゃったよ」
「うん?そんなこと気にしないで良いんだよ、うちの孫も全員浪人しているさ
、少し寄り道してもいいのだよ」
「ありがとう、おばあちゃん、これ」
俺は千代紙の折り紙を渡した。
「こんな、良いものくれるのかい」
「うん、店でちょうど良いもの見つけたから」
「そうかいそうかい、まこと君は優しいね」
「はは、ありがとう」
僕は紗智の部屋の前に来ていた。
「紗智」
「何、お兄ちゃん」
紗智が扉を開ける。
「プレゼントだよ」
そう言って、大きな箱を渡した。
「何これ?」
「開けてみて」
紗智が箱を開けると、大きな将棋盤が入っていた。
「これ、高かったでしょ」
「はは、ちょっと奮発した、高校入学おめでとう」
「へへ、ありがとう、そろそろリアルにも慣れとかないとね、紗智が行く高校
には将棋部があるんだよ」
「そうか、よかったな」
「うん」
私はお母さんと花見に来ていた。
「お母さん」
「うん?」
「桜綺麗だね」
「恵理も綺麗になったわね」
「だめだめ、桜と比べちゃダメだよ」
「恵理の作ったこの卵焼きおいしーねー」
「うん、少しはお母さんの味に近づいたかな」
「まだまだよ」
「あはは、あ、みんな来た」
私は手を振る。
みんな手を振って答える。
完
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